今回お話するのは
美しきイゾルデを求める騎士
トリスタン
です。
トリスタンとは?
トリスタンはアーサー王伝説における円卓の騎士の一人。
ランスロット、ラモラックに並んで円卓の騎士最強の3人の1人の騎士でもある。
~トリスタンのプロフィール~
- 欧文表記: Tristan,Tristram
- 別表記: トリストラム
- 異名1: 悲しい生まれ
- 異名2: 怒れるライオン
- 初登場: キャクストン版第2巻8章
この他にも
- 円卓の騎士の冒険とロマンス
などに登場しています。
トリスタン: 悲しい生まれをした騎士
トリスタンはリオネスという国の王メリオダスの子供。
母エリザベスが出産直後に死亡したので、名前は「悲しい生まれ」を意味する「トリスタン」と名付けられている。
その際のエピソードは以下のようになる。
~悲しき生まれ~
リオネスという国の領主メリオダスは、コーンウォールのマーク王の妹のエリザベスと結婚。
程なくしてエリザベスは子供を身籠った。
しかし、ある日メリオダス王は、彼に恋する婦人の魔法によって誘拐されてしまった。
王を探すためにエリザベスは侍女たちと共に、森に入ったが、その場で急に産気づいてしまった。
そこで子供を産み、侍女たちにこう願った。
「子供の洗礼名を「トリストラム(悲しい生まれ)」として欲しいとメリオダス王に伝えてください」
こう言い残し、エリザベス王妃は息絶えてしまったのであった。
メリオダス王はこの後マーリンによって救出され、妻の遺言通りに子供に「トリストラム」と名付けたのであった。
寛容な騎士「トリスタン」
トリスタンが人気なのは、その強さだけでなく、その「寛容さ」にもあるでしょう。
実際、その様子を垣間見ることが出来るエピソードがあります。
~毒殺未遂事件~
トリストラムと名付けられてから7年後、メリオダス王はブリタニ―のホウェル王の娘と結婚。
数人の子供をもうけたが、ホウェル王の娘はトリストラムを煩わしく思った。
自分の子供を跡継ぎにしたいが、彼がリオネス国の跡継ぎとなるからである。
そこで、トリストラムを毒殺する計画を立て、毒入りの銀の水差しでトリストラムを毒殺しようとして。
しかし、その水差しは彼女の子供が飲んでしまい死亡してしまった。
それでも諦めずに同じことをしようとしたが、今度はメリオダス王がワインと勘違いして飲もうとしてしまったのである。
王妃は慌てて王から取り上げてしまったので、企みが明るみになり「火あぶりの刑」を宣告された。
しかし、トリストラムが自分の命を狙った王妃の助命を乞い、メリオダス王と王妃を和解させた。
メリオダス王はトリストラムをほとぼりが冷める為か、トリストラムを侍従カヴァーネルと共にフランスへ7年の留学に送り出した。
留学から帰国したトリストラムは「竪琴・狩猟・鷹狩り」などの達人となっていた。
そして、メリオダス王の妻も命を助けてくれたトリストラムを愛したのであった。
トリスタン: マーハウスとの決闘
騎士トリスタンにとって重要な物語はこの「マーハウスとの決闘」でしょう。
なぜ彼が決闘を行う必要があったのか?
そのお話を見ていきましょう。
~2国間の争い~
コーンウォールのマーク王はアイルランドのアグウィッサンス王に長い間年貢を払っていた。
しかし、ここ7年間は滞納していたので争いが起こっていた。
そこで、マーク王はアグウィッサンス王にこう提案した。
「年貢の支払いをかけて、お互いの騎士を1人ずつ選出して決闘を行おう」
これを受けたアグウィッサンス王は騎士マーハウスを選んだ。
彼は「アイルランド王妃の弟であり、円卓の騎士」という当時世界でも最強の騎士でもあった。
マーク王はマーハウスと戦う騎士を募集したが、誰一人として名乗りを挙げることはなかった。
さて、この噂がメリオダス王の元に届き、トリスタンは恥と怒りを覚えた。
曰く
「コーンウォールにはアイルランドの騎士マーハウスに立ち向かおうという騎士が一人もいないのか」
そこで、トリスタンはマーク王の元に向かい、「私がマーハウスと戦う」ということを申し入れた。
王はとても喜び、彼を騎士に任命した。
そして、トリスタンとマーハウスの決闘は、マーハウスが停泊している船の近くの島で行われることとなった。
決闘が行われる島についたトリスタンとマーハウスは激しい戦いを繰り広げた。
勝負は激しさを増したが、遂にトリスタンの剣がマーハウスの頭蓋骨に食い込み、勝負は決した。
(トリスタンの剣の破片がマーハウスの頭に突き刺さったままであった。)
マーハウスは逃亡し、帰りの船で治療を受けたが、治療の甲斐なく死亡。
彼の姉アイルランド王妃は、マーハウスの頭部に刺さっていたトリスタンの剣を復讐の念と共に保管したのであった。
一方、マーハウスが毒を使っていたのか、戦いで重傷を負ったトリスタンの傷も癒えることはなかった。
しばらくすると、博識の貴婦人がコーンウォールに訪れてこう助言。
「彼の傷は毒がもたらされた国に行かない限り癒えることはない」
そこで、トリスタンは名前を偽り、アイルランド王の城に赴き治療を受けることとした。
そして、そこでトリスタンは「美しきイゾルデ」に出会うのであった。
トリスタン: イゾルデを巡る物語
トリスタンの物語の中心となるのは「美しきイゾルデ」という貴婦人を巡る恋の話。
- 権力を使ってイゾルデを妻にしたトリスタンの主君「マーク王」
- イゾルデを愛する異教徒の騎士「パロミデス」
の2人と争いながら、イゾルデと不倫の愛を貫く物語。
この物語は物凄く長く、500章以上アーサー王物語(キャクストン版)の内で約170章を占めています。(503章に対して172章ある感じです。)
実に3分の1を占める超大作の悲哀物語でもある。
ここでは物語の詳細は省略するが、物語の物凄く簡単な概要は載せておく。
~イゾルデを巡る結末~
イゾルデを巡る争いは数々の争いや謀略戦を経て、アーサー王の計らいでトリスタンとマーク王は和解。
トリスタンは想い人と同名の「白き手のイゾルデ」と結婚。
しかしトリスタンの恋心は変わらず、美しきイゾルデと駆け落ちをしてしまった。
3年ほどは幸せな生活を送るが、主君に背き続けることはできず、マーク王に美しきイゾルデを返して国に戻った。
その後、パロミデスをキリスト教徒に改宗させ、彼は物語から完全に姿を消した。
トリスタン: 最強の騎士のあっけない最期
イゾルデと悲しい別れをし、ライバルのパロミデスをキリスト教に改宗させたトリスタンは、一度完全に物語から姿を消します。
その後、もう一度彼の名前が登場するのは物語の終わりの方。
ランスロットの不倫が発覚した直後(21巻あるキャクストンの19巻目)である。
アリーという騎士の癒されない傷を治すため、挑戦した騎士たちの中に彼の名前がありました。
しかし、そこでの紹介は彼の最期でした。
トリスタンは美しきイゾルデの脇に座って竪琴を弾いている時
隠れていたマーク王に鋭い槍で貫かれて殺害された
この時、トリスタンは死去しており、これ以降の物語に登場することはありません。
最も高く評価されている騎士であっても、最期はあっけないものであった。
作品「散文のトリスタン」
「トリスタンとイゾルデ」の物語の原型は、無関係の伝承の物語「散文のトリスタン」である。
そこに少しづつ設定を加えていった(トリスタンが円卓の騎士)物語が、「アーサー王の死」に「トリスタンとイゾルデ」は丸々組み込まれただけという。
では、「散文のトリスタン」において、トリスタンの最期はどうなっているのか?
トリスタンは瀕死の重傷を負っており、その傷は「金髪のイゾルデ(美しきイゾルデ)」にしか治せないものであった。
愛しい彼女の到着を待ちわびていたが、そのことに嫉妬した妻「白い手のイゾルデ」が
「金髪のイゾルデは来ない」
と嘘をつかれ、絶望して死んでしまった。
「アーサー王の死」と比べて死ぬことに変わりはないが、その最期はだいぶ違うものとなっている。
まとめ: トリスタンはこんな円卓の騎士
今回は円卓の騎士の一人トリスタンについて紹介させていただきました。
竪琴が得意な詩人としての才能を持ち、狩猟などを得意とする狩人としての才能を持つ。
そして、戦いにおいてもガウェインに勝利する騎士。これでもランスロットよりかは弱いとされてるのは納得はできないですね。
いかにマロリーがランスロットを贔屓していたかが分かりますね・・・。
という訳で今回のまとめ
- トリスタンはアーサー王伝説の円卓の騎士
- 名前の意味は「悲しき生まれ」(母が出産時に死亡)
- 幼き頃に毒殺されかけたことがある
- 竪琴、狩猟などの才能がある
- 最強の騎士マーハウスとの戦いで勝利
- 治療先で運命の女性イゾルデと出会う
- 様々な障害を乗り越えたが、イゾルデとは別れ離れに
- 最期は主君に槍で貫かれて死亡
- トリスタンが主人公の物語では最期がかなり違う
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