【アーサー王伝説】第21巻11章
ランスロットは隠者に幻のことを告げ、7人の仲間を引き連れてグラストンベリーからアームズベリーに歩いて行った。
30マイル(約48㎞程)の距離であったが、一日かかった。
ランスロットが尼僧院に訪れる半時間前(30分ほど前?)グィネヴィア王妃は亡くなっていた。
侍女たちが言うに、
「私の亡骸を夫のアーサー王の側に埋葬する為に、ランスロットが出来る限り早く来てくれるでしょう。全能の神よ、私の俗世の眼で彼を見る力がないように」
亡くなるまでの2日間、祈り続けたのであったと。
ランスロットは、王妃の亡き顔を見て、ため息をつくだけであった。
そうして、一行は王妃の遺体を自分たちの礼拝堂まで運び、盛大な祈りの儀式が取り開かれた。
王妃の遺体が土の中に埋められた時、ランスロットは気を失い、倒れてしまった。
隠者が悲しんでは神の御心に背くと戒めると、ランスロットは胸の内を語った。
「私の悲しみは王妃との思い出から出たからではありません。
王と王妃の遺体が並んでいるのとを見た時、王妃の美しさと気高さが、アーサー王にも備わっていたことを思い出したのです。
そして、お二人の私へのご親切に対し、私の彼らへの親切は十分でなかったという思い出も私の心に重くのしかかったのです。
だからこそ、どうしても私の体を支え切ることが出来なくなったのです。」
主な登場人物
【登場人物】
・ ランスロット
物語の感想
ついに、王妃が亡くなり、その葬式の為にランスロットが向かう場面から始まります。
ランスロットが辿り着く前の30分前に王妃が亡くなるというのは、運命のいたずらというべきか。
ただ、王妃は神に「あの方(ランスロット)のことを俗世の目で見ないように(彼を見る前に亡くなりますように)」と祈っており、神もその願いに答えた形になる。
もし、亡くなる直前に辿り着いていればランスロットも王妃も悲しみのあまりその場で死んでしまいそう。。。
ランスロットが王妃の亡き顔を見た時にため息しか出なかったのは、予言のことを知っていたからとはいえ、相当の悲しみの深さが伺える(悲しみすぎると涙もでない。ただ現実を受け止めるだけ。)
そして、王妃の埋葬が行われた時、ランスロットは今までの王妃とアーサー王からの親切に対する思いを全て話し、自分の後悔を話し始めた。
世界で最も優れた騎士の胸中を知ることが出来ます。
出典: トマス・マロリー「アーサー王物語 5(筑摩書房)」
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