今回紹介させていただくのは
ケルトの運命の女神
アリアンロッド
です。
ケルト神話に興味がある方はぜひ一読してみてください。
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ケルト神話のアリアンロッドとは?
アリアンロッドはケルト神話において信仰されている女神さまの一人です。
ウェールズ神話の「マビノギ四枝の第4の物語」にその名が登場します。
~アリアンロッドのプロフィール~
- 名前の意味: 銀の輪
- 欧文表記: Arianrhod
- 別名: アランロド(Aranrhod)
- 出典: マビノギオン
アリアンロッドの血筋
アリアンロッドはケルト神話においてはっきりとは語られていません。
ですが、その血筋はウェールズ神話の母神ドーンの娘であることは分かっています。
その他、耕作の神アマエソン、ギルヴァエスウィ、グウィデオンといった神様を兄弟に持っています。
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アリアンロッドの名前
プロフィールにも記されていますが、彼女の名前には
- 銀の円盤
- 銀の輪
といった意味があり、彼女自身も「アランロド(大きな輪)」と呼ばれることがあります。
これら共通するのは運命の女神を表す「輪」です。
また、ウェールズ地方では詩人が「カエル・アリアンロッド」という言葉をよく使います。
これは「ギリシャ星座のかんむり座」のウェールズ名です。
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アリアンロッドとマース王の出会い
女神が登場する「マビノギ四枝」の物語では、「北ウェールズのグウィネッズの領地を治めるマース」との物語があります。
そこにはマースが持っている奇妙な弱点との物語があります。
~マースの奇妙な呪い~
マースは戦争などどうしようもない場合を除き、常に足を処女の膝の上に載せておかないと死んでしまうという弱点があった。
このマースの足を預かる役目はゴーウィンという美少女が受け付けていた。
だが、マースの甥であるギルバエスウィという青年がゴーウィンに恋をしてしまった。
ある時、ギルバエスウィは弟のグウィディオンと共謀し、グウィネッズと南ウェールズのプリデリ王との間に戦争を起こさせた。
マースはその戦争に出征し、ゴーウィンは宮廷で留守にしていた。
その隙をついてギルバエスウィはゴーウィンを強引に犯してしまった。
戦争はグウィディオンとプリデリ王の一騎打ちを経て、マース王の勝利で終わった。
だが、帰還したマースはゴーウィンの事件を知り激怒した。
マースは責任を取り、ゴーウィンを妻にし、ギルバエスウィとグウィディオンの兄弟を3年間獣の姿で過ごす罰を与えることになった。
事件は幕を閉じたかのように見えたが、ある問題が生まれた。
それがマースの弱点の後任となる「足乗せ役の処女」であった。
その候補に挙がったのがアリアンロッドであった。
箒に跨って子供を産んだアリアンロッド
マースとゴーウィンの事件後に選ばれたアリアンロッド。
そこで彼女は足乗せ役になって終了・・・・・ではありません。
なぜなら、処女の証明をしないといけないからです。
~アリアンロッドと処女の証明~
アリアンロッドは処女の証を示すために魔法の杖の上に跨ぐよう命じられた。
アリアンロッドが処女なら何も問題は起こりません。
だが、杖に跨いだとたん、彼女は二人の男の子を出産した。
この出産理由には複数の説があるが、彼女の兄弟の「グウィディオン」が秘密の恋人であり父親であったという説がある。
当然、彼女は処女ではなく、自分の秘密を暴露された恥辱と落胆から、この時生まれた二人の子供を酷く憎んだ。
片方の子供は生まれて間もなく海へと去っていき、アリアンロッドと母子の交わりをすることはなかった。
もう一人の子供は生まれてすぐに黒い箱に隠されたが、グウィディオンに発見された。
だが、アリアンロッドは息子を認知することはなく、グウィディオンが養育することになった。
このことからも、アリアンロッドは世界的にもかなり珍しい自分の母性を否定した女神。
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アリアンロッドが子へ与えた3つの呪い
黒い箱から救出された二人目の息子は、叔父のグウィディオンの元で育っていきました。
ですが、アリアンロッドはなおも息子を認知しませんでした。
そればかりか、息子には3つの呪いを与えることになりました。
それが
- 名前を持つことが出来ない
- 武器や甲冑を持つことが出来ない
- いかなる人種の妻をも娶れない
です。
名前を持つことが出来ない呪い
~息子とアリアンロッド~
アリアンロッドは息子に対し「自分が与えるまでは名を持つことが出来ない」という呪いをかけた。
その呪いに対し、グウィディオンは靴職人に変装しアリアンロッドに近づいた。
そして、子供に対して「スェウ・スァウ・ゲフェス」という「素敵な腕前の」や「光り輝く人」の意味を持つ名前を呼びかけさせた。
この機転によって子供は名前を得ることになった。
武器や甲冑を持てない呪い
アリアンロッドは自分を陥れたことに大変怒り、今度は
「自分が与えるまではスェウは武器や甲冑を持つことが出来ない」
という呪いをかけた。
そこで、グウィディオンは魔法を使い、アリアンロッドの住む城に大軍が襲ったかのように見せかけた。
当然アリアンロッドはそのことに気が付かず、仕方なくスェウに武器と甲冑を渡して呪いは克服された。
いかなる人種の妻をも娶れない呪い
1度目の呪いも2度目の呪いも、自分が嵌められて克服された。
このことに対してまたも怒ったアリアンロッドは3度目の呪いとして
「スェウはいかなる人種の妻をも娶ることができない」
という呪いをかけた。
だが、グウィディオンはマースと協力して様々な種類の花を集めた。
その花でブロダイウェズという女性を作り出して嫁にした。
この後、スェウはマースからディノディング州という領地を与えられ、立派な統治者となった。
3つの呪いの意味
アリアンロッドは息子に呪いをかけましたが、この呪いが「なぜ3つなのか」という話があります。
そこで提唱されたのが、「ヨーロッパの女神が有する3つの権能」です。
- 神聖性(名前)
- 戦闘性(武具)
- 豊穣性(婚姻)
にそれぞれ呪いが対応しています。
なので、アリアンロッドは女神の権限である3つの領域に呪いをかけ、息子の運命を終わらせようとしたという話です。
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まとめ: アリアンロッドはこんな女神様
今回はケルト神話において、事情が事情の女神アリアンロッドについて紹介させていただきました。
子供に愛情どころか敵意しか抱かなかったのは悲しい話です。神様も完全ではないということですね。
というわけで今回のまとめ
- アリアンロッドはマビノギ四枝の登場する女神
- 領主マースが「(致し方ない時は除く)常に処女の膝の上に足を乗せる」必要があった
- 前任者は策略に合い強姦された(マースの妻に)
- アリアンロッドは「処女の証明」をするために箒に跨った
- 跨った瞬間に二人の子供を出産(実は処女ではなかった)
- この出来事を恨んで片方の息子に3つの呪いをかけた
- 息子は父の助けもあって呪いを全て克服