今回紹介させていただくのは
神聖なる川の女神
ボアーン
です。
ケルト神話に興味がある方はぜひ一読してみてください。
ケルト神話のボアーンとは?
ボアーンはアイルランドのボイン川などで信仰されている女神さまの一人です。
~ボアーンのプロフィール~
- 名前の意味: 牛
- 別名: Boand(ボーン?)
- 欧文表記: Boann
- 出典: トゥアハ・デ・ダナーン神族
「白い牛」
ボアーンの大きな特徴はその異名。
「牛」となっているが、本当は「白い牛」、つまり「乳牛」に近い。
古来より牛と水は神聖なものであり、重要視されてきた。
その為か、神聖な水とミルクは女神ボアーンの胸から流れ出るとも考えられてきた。
また、
天の川は白牛の道であり、彼女は天の川そのもの、もしくは天の川を支配する
とも考えられている
ボアーン: 神聖な川
人類にとって、水は物凄く大切なものである。
そのなかでも、ケルト人は水に対して特別な信仰心を持っていたとみられている。
その証拠として、川や泉の一つ一つに「女神」がいることが記されている。
その中でも、ボアーンはアイルランド東部を流れている「ボイン川」の女神であり、守護神でもある。
この川は歴史、宗教的に見てもかなり神聖な川であり、
- フィン・マックールの知恵の鮭の物語
- ニューグレンジ遺跡(異界の入り口)
- アイルランドの王の即位式が行われる「タラの丘」
- アイルランドの歴代の首都
などが、この川の流域にあり、女神ボアーンがいかに重要であったかが伺える。
豊穣神「ダグザ」の愛人
彼女はトゥアハ・デ・ダナーン神族の王になったこともある、「豊穣神ダグザ」の愛人でもあった。
彼女は妊娠をしていたが、愛人であるということを隠すために、「太陽の動き」を魔法で止めた。
その間は実に「約9か月」であり、妊娠から出産をたった「一昼夜」で終わらせるという神話がある。
実にぶっ飛んだ神話だが、この物語で愛の神「Aengus(エイングス、オィングス)」が誕生している。
ボアーン: 夫ネフタンとの物語
そんなボイン川だが、川の発生のお話がアイルランドには2つほどある。
この物語は、実質女神ボアーンがどのように関わっているのかが分かる。
その物語は
- レンスター書の「ディンヘンハス」
- 井村君江の「ケルト神話」
それぞれ見ていきましょう。
1: レンスター書の「ディンヘンハス」
12世紀後半に複数の人間によって作成されたとみられるレンスター書。
そこに載っている「ディンヘンハス」の第3巻に以下のように記されてる。
ボアーンは水神ネフタンの妻であった。
ある日、彼女は夫以外は入ってはいけない「シー・ネフタンの井戸」に入るという禁忌を犯した。
井戸から水を引こうとした代わりに、大量の水が井戸から溢れ出し、彼女は飲み込まれた。
ボアーンは腕、足、目、最期には命を失ってしまった。
そして、溢れ出した水はボイン川となった。
2: 井村君江著の「ケルトの神話」
アイルランドの妖精研究の第一人者の井村君江氏。
この方が記された「ケルトの神話」には以下のように記されている。
これも、彼女の夫ネフタンが関係しているように感じられる。
レンスター地方の小さな泉には神聖な9本の「ハシバミ」という木が植えられていた。
この木には「食べれば世界の全ての秘密が分かる知恵の実」がなっており、この泉には知恵の鮭も住んでいたという。
ボアーンは「ネフタンとその従者だけ」しか入れない、神聖な泉に入り、その実を食べようとした。
すると、泉から水が溢れ出して彼女を飲み込んでしまったのであった。
まとめ: ボアーンはこんな女神様
今回はボイン川の女神ボアーンについて紹介させていただきました。
日本語の音的になんだか変な感じがしますが、ケルト神話においてはかなり重要な女神さまです。
川の女神が水に流されて死んでしまうのも怖い話ですけどね。
という訳で今回のまとめ
- ボアーンはケルト神話における女神
- ボイン川という川を神格化した神
- 白い牛という別名を持ち、胸から水やミルクを出す
- 豊穣神ダグザの愛人
- 妊娠の発覚を恐れて、魔法を使って一夜で出産する
- 夫の井戸に入ってしまい、水に流されて死亡する