今回お話するのは
フィン・マックールの物語
フィアナ神話
です。
親指を噛んで知恵を得る力を事故とはいえ、料理で手に入るのは正直笑える。
フィアナ神話とは
フィアナ神話はアイルランド神話の中の一部です。
この神話はアルスター神話から約300年後のアイルランドを舞台として物語が繰り広げられています。
島を統一した王様「至高王(Ard-Ri)」がその力を持ち、直属の騎士団「フィアナ(フィオナ)騎士団」を従えています。
アイルランド島を統治していたフィアナ騎士団の伝説的団長「フィン・マックール」、彼を中心にして描かれている物語です。
(このフィオナ騎士団はアーサー王の円卓の騎士の原型ともいわれています。)
フィアナ神話: 愛と憎しみと裏切り
アルスター神話は群雄割拠の時代でもあり、まさに戦乱の時代でした。
その一方、フィアナ神話のアイルランドでは戦争はそこまで起きません。
至高王が強い力を持っていたので、他国との戦争はほとんど描かれず
- 騎士団内部の裏切りあい
- 恋愛と破局
- 異世界での冒険譚
などが多く描かれています。
フィアナ神話: 知恵も策略も
フィアナ神話に登場するフィアナ騎士団。
彼らの団長は知恵に優れた英雄であり、親指を噛むことで困難な状況を打開できる知恵を得ることができます。
その力を駆使し、武力だけでなく策略を駆使して障害を打ち破っていくのが、フィアナ物語の戦いの特徴といえるでしょう。
フィン・マックールとは?
フィン・マックールはレンスター王国出身の騎士。
本名はデムナといわれていますが、「金髪で肌の白い美しい美形」だったので、
- フィン: 金髪
- マックール: クール氏の息子
という意味の名前で呼ばれています。
銀腕王ヌァザ(トゥアハ・デ・ダナーン神族)の血を引く才色兼備の騎士団長です。
フィオナ騎士団
そんなフィン・マックールが指揮するフィオナ騎士団。
名前の「フィアナ(フィオナ)」はゲール語で「兵士」を意味しています。
全アイルランドを統治する「至高王」の直属の精鋭騎士団でもあります。
面白いことに、正式名称は「フィアナ(フィオナ)」であり、「騎士団」を付けることはないです。
騎士団とつけるのは後世の習慣なだけです。
入団するのは厳しい
フィオナ騎士団は最盛期には3000人以上の団員が在籍していました。
それ以上に、入団資格は誰にでもあったので、入団希望者も後を絶ちませんでした。
そこで、フィンは厳しい入団試験を設けていました。
一部とはなりますが、
- 森の中完全武装の騎士から逃げ切る。しかし、髪を結んでいる紐が切れたり、恐怖で手が震えると、不合格
- 自分の額の高さの枝を飛び越える
- 自分の膝の高さまで身を屈めて、坂を駆け抜ける
- 下半身を地面に埋めてハシバミの枝と盾を持って、四方八方から襲い来る九人の騎士たちを相手に身を守る(少しでも攻撃が掠めれば落第)
- 詩篇十二冊とエリンに伝わる古来の物語を二十以上暗記
これらのような厳しい試験を合格した人間にのみ、フィアナ騎士団への入団が許可されています。
そして、至高王への絶対の忠誠を誓う必要があります。
フィン・マックールの力
フィン・マックールは狩人であり、騎士でもあったので優れた才能を持っていました。
それ以上に、非常に便利な魔法的特殊能力を有していました。
親指を舐めると知恵が湧く力 | 困難な状況下などで自分の親指を舐めると、状況を打開する知恵が溢れてくるという力です。 「知恵の鮭」からこの力を得ています。 |
癒しの水の生成 | フィンが両手で掬った水を、病気や怪我を治療する癒しの水に変えることができます。 この力で彼の友人であるディルムッドを治すことができるはずでした・・・・。 |
これらの力を駆使して、3000人以上の団員をまとめ、騎士団の内外からも信頼されてきました。
フィン・マックールの人生
そんなフィン・マックールの栄誉も永遠というわけではありません。
彼の一生の中で重要となる出来事を見ていきましょう。
- 知恵の騎士の誕生
- 巨人アレインとの闘い
- 指導者としての衰退
- ディルムッドの見殺し
- 最期
で見ていきましょう。
知恵の騎士として
フィンはフィアナ騎士団長「クール」の息子だったが、親は部下の騎士隊長ゴルに殺害されてしまいました。
そういった経緯もあり、身分を隠して成人まで過ごしていた。
そんな成人間近となったある日。
フィンは弟子入りしていたドルイドのフィネガスから、「知恵の鮭」の調理を任されました。
鮭を焼いていた時に鮭からはねた油で親指を火傷。
思わずその指を口に含んだので、知恵の鮭の力を手に入れてしまった。
- 親指を舐めると知恵が湧く
- 両手で掬った水が癒しの水になる
この力を得たことで、彼は知恵の騎士として誕生しました。
炎の息のアレインとの戦い
その後成人したフィンはどうなっていったのか?
FGOで持っている武器もこの戦いで使われた武器です。(彼自身の武器ではない)
それを見ていきましょう。
成人したフィン・マックールは、至高王コルマック・マック・アートと面会。
自分の出生を告白して、近衛騎士の一員として任命されました。
また、このころ首都では「アレイン」という巨人に騎士団は悩まされていた。
このアレインは
- 魔法の竪琴を使って人を眠らせる
- 街で悪事を働く
- 最後に炎の息で街を焼き去る
という力を持っていて、この竪琴の力にはフィオナ騎士団も眠らされてしまい戦えなかった。
そこで、フィンは父の旧部下から「持ち主の眠気を飛ばす魔法の槍」を借り受け、アレインをたやすく打ち取りました。
その褒美としてコルマック王はフィンの望みを聞き、フィアナ騎士団の団長に任命。
フィンは父を殺した前団長のゴルを許して部下に加え、騎士たちに至高王への忠誠を徹底させました。
そして、この時に騎士団への入団基準を厳しくし、最盛期を築き上げた。
指導者としての衰退
公平で有能であったフィン・マックール。
しかし、妻のサイヴが誘拐されてしまい、取り戻すことができませんでした。
この辺りから、指導者として衰退がはじまりました。
サイヴとの子供であるオシーンは父の元気を取り戻すために、絶世の美女であった至高王の娘「グラーニャ」を妻に勧めました。
当然至高王もこれに賛同したが、グラーニャは結婚直前にフィンが最も信頼していた騎士団の若き騎士ディルムッドに呪いをかけ、自分と強制的に駆け落ちさせてしまいました。
ディルムッドを見殺しに
ディルムッドと和睦してその罪を許しましたが、グラーニャを奪われた恨みは消えていませんでした。
そんなある日、ディルムッドは狩猟中に魔猪に瀕死の重傷を負わされてしまいました。
その場に居合わせたフィンはディルムッドの親友であり、フィンの孫に懇願されて「両手で水を救うと癒しの水になる」力を使おうとしました。
ですが、グラーニャに関する恨みからか迷いなのか・・・・・。
フィンは2回、3回と水を零してしまい、辿り着いた時には既にディルムッドは死亡していました。
このこともあり、一度は許したはずの騎士を見殺しにしたフィンに部下は失望。
忠誠は徐々になくなっていきました。
フィン・マックールの最期
そして、フィンを信頼していた至高王コルマックが死亡してしまい、新たな王ケアブリが登場しました。
王ケアブリはフィンを恐れて冷遇した為に、騎士団は「至高王派VSフィン派」に分裂してしまいました。
ケアブリはフィンを討伐対象にし、大軍の討伐隊を向かわせました。
フィンは残っていた部下とともに最後の戦いに挑みましたが、多勢に無勢で戦死してしまいました。
こうして、フィオナ騎士団の栄光はフィンの死とともに終わりを迎えました。
まとめ: フィオナ騎士団とフィン物語群
今回はアイルランド神話のフィオナ騎士団と、その騎士団長に関するお話をさせていただきました。
妻も誘拐されて、妻となる女性も最も信頼していた親友と駆け落ちされて・・・・。
まさに、盛者必衰の物語でした。
という訳で今回のまとめ
- フィオナ騎士団はアイルランド神話の一つの時代に活躍した騎士団
- 入団には厳しい条件がある
- 団長はフィン・マックール
- トゥアハ・デ・ダナーン族の血を引き継いでいる
- 知恵の鮭の調理中の事故により魔法の力を得る
- 親指を舐めると知恵が溢れ出る
- 両手で水を掬うと治癒の水に変わる力
- 一人目の妻は誘拐されてしまい、そのまま出会えず
- 最も信頼していたディルムッドの妻となるはずの女性と駆け落ち
- ディルムッドが事故で死にかけの時、恨みから見殺しに
- 新しい至高王と対立し、戦いで戦死する
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