【アーサー王伝説】第21巻9章
ボースはランスロットに「今のこの国をたった一人で進むことはおやめください。」 と戒めた。
ランスロットは、言い争っても無駄だと思い、西に向かって馬を進めた。
そうして7,8日ほどたった頃、ランスロットはグィネヴィア王妃がいる尼僧院に辿り着いた。
その回廊を歩いている時に、王妃はランスロットに気が付き、3回気を失った。
口が利けるようになると、ランスロットを王妃の元に連れてくるように願った。
そして、側にいた婦人たちに、ランスロットとの関係、そのせいでアーサー王が死亡してしまったことも明かした。
「だからこそ、自分はここにいるのであり、ランスロットを愛することはもうできない。
再び愛し合えば、お互いを滅ぼしてしまう。私は愚かな自分を改めるために祈っています。
あなたは新しい妻を迎え、私の為に祈ってください。」
ランスロットは、王妃がここに残るのであれば、自分も全てを捨てて貴方と共にいると言い放った。
「神に誓って、私のこの世の喜びはあなただったのです。あなたが修行の道に身を投じるなら、私も修行の道に入りましょう。」
主な登場人物
- ランスロット
- グィネヴィア王妃
物語の感想
ランスロットは仲間たちの静止を振り切り王妃を探すために、この世で最も危険な国を旅した。
8日もこの国を1人旅できるのは流石最強の騎士というべきか。
結局、王妃のいる尼僧院に辿り着き、王妃は彼を見つけ3回も意識を失ったので、それだけ衝撃的なことだったのでしょう。
その後の王妃の言葉は実に悲しい。
ランスロットのことは愛しているが、今までの災禍は彼と愛しあってしまったことが原因である。
だからこそ、彼を愛してはならない。自分を戒めるためにここにいるのだ。
あなたの未来を想っています。新しい妻を見つけて私のことは忘れてください。
こんな言葉を聞かされて、愛に生きたランスロットが「はい、そうですか。分かりました。」と言えるわけはないですね。
ランスロットはどんな過ちが起きても、王妃と共に苦行の道を歩もうと考えたのでしょう。
自分の今の立場もその場でサラッと捨てるぐらいの判断ですし、王妃への愛はそれだけ深かったことが伺えます。
出典: トマス・マロリー「アーサー王物語 5(筑摩書房)」
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