今回お話するのは
アーサー王の死
「白い雄鹿と猟犬」
です。
日本のアーサー王伝説の中で恐らく一番有名な書物の2巻の紹介です。
「アーサー王伝説」とは?
日本で一番有名なアーサー王伝説と言えば、「アーサー王がランスロットと内戦~」「モードレッドが~」とかあると思います。
実はこの「アーサー王の死」というのは、「15世紀のフランスの作者トマス・マロリー」が、
- アーサー王列王史
- キルッフとオルフェン
- マビノギオン
- 流布本
などの比較的短い文学作品を「まとめて」新しい物語にしたものです。
なので、「アーサー王の死」は「アーサー王伝説の原典」ではなく、「様々な古い書物から、アーサー王の一生を作り上げよう」といった目的で作られた本ともいえます。
この辺りはまた、細かく記しておきます。
アーサー王の死の中身
この「アーサー王の死」の中身は、大まかに分けて「21巻 507章」あります。
- 1~5巻: アーサー王の物語
- 6~12巻: 騎士たちの物語
- 13~17巻: 聖杯探索
- 18~21巻: 円卓崩壊
主にこの4つに話は分類されていきます。
基本的にどの話にもランスロットが絡んでいますが、騎士たちの物語も面白いものです。
また、トリスタンとイゾルデの物語は、この「アーサー王の死」の中で最も大きい物語で、全体の1/3を占めています。
ここでは3巻のお話をいたします。
第3巻 「グィネヴィア王妃と白い雄鹿」
第3巻は「白い雄鹿とグィネヴィア王妃」をに関するお話について15章を使って記している。
キャメロットの教会でグィネヴィア王妃との婚礼式が行われている最中に、白い雄鹿が駆け込み、後を追うように黒い猟犬が現れた。
すると白い猟犬が現れ雄鹿に噛みついた。
噛みつかれた雄鹿は騎士を1人蹴飛ばし、蹴飛ばされた騎士は猟犬を捕まえて馬に乗せて走り去った。
そこに猟犬の飼い主である婦人が現れて騎士に連れていかれた猟犬を取り戻してほしいとアーサー王に懇願。
王が拒否すると鎧をまとった騎士が夫人を連れて行ってしまった。
マーリンは王に何とかしないといけないと戒めた。
そこで、ガウェイン卿が逃げた白い雄鹿を、トー卿が猟犬と騎士を、ペリノ―王が夫人と騎士を連れ戻すために冒険に出るのであった。
登場人物
人物名 | 簡単な人物紹介 |
グィネヴィア王妃 | キャメラード国の王ロデグランスの娘にしてアーサー王の妻。 美しさについてはこの世全ての女性に勝るほど。 |
アリーズ | 牛飼いで13人の子供がいる。 トーはペリノ―王の子供だが、アリーズはそのことは知らなかった。 (アリーズの妻の処女をペリノ―王が奪い、その時にトーを身籠っている。) |
トー | ペリノ―王の息子。 円卓の騎士として任命され、猟犬と騎士を追いかける冒険に出た騎士。 |
ペリノ―王 | トーの父親で円卓の騎士。 夫人と騎士を連れ戻すために冒険に出た。 |
ガウェイン | ロット王の息子。 逃げた白い雄鹿を追いかけた円卓の騎士の1人。 |
ガヘリス | ロット王の息子。 ガウェインの弟で、逃げた白い雄鹿を追いかけたガウェインに同行した。 |
物語の見どころ
最初の5章はグィネヴィア王妃とアーサー王の婚姻、円卓の騎士の結成。
円卓の騎士が結成し、同時に崩壊の原因となる王妃がここで登場してきます。
魔術師マーリンは
アーサー王と王妃の結婚はあんまりよくないよ。
だってランスロットが彼女を愛して、彼女もランスロットを愛するようになるから
とサラッと忠告されているのも、あまり重要そうでないようで物凄く重要な文章となっている。
残りの10章で円卓の騎士結成後初めての冒険が発生します。
それが白い雄鹿と猟犬の冒険。
物語の導入としても中々のカオスっぷり。(ちなみに、白い雄鹿はこの導入部分では「噛みつかれて騎士を蹴飛ばした」とだけあり、逃げたとは記載がないが逃げたことになっている。)
また、3人の騎士の冒険はただの冒険ではなく、それぞれあることを目的とした冒険となっており、それを読み解くのも面白い所。
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