今回お話するのは
ウェールズ神話の原典
マビノギオン
です。
マビノギってゲームありますよね。やったことないですけど。
マビノギオンとは?
マビノギオンはウェールズ神話の原典とされている書物です。
実際には、「複数のウェールズ神話を英訳した物語集」であり、
- ヘルゲストの赤書
- レゼルッフの白書
- カーマ―ゼンの黒書
- タリシエンの書
の4つの神話文献から「3章の合計11編の物語」を、シャーロット・ゲストが英訳したものです。
マビノギの意味
「マビノギ」の正確な意味自体は分かってはいません。
ウェールズの言葉で「少年」を意味する「mab」に関係しているとは言われています。
そしてこの言葉が題名となったのには、各物語が「マビノギのこの枝はここでおしまい」という締めで終わっているのが理由です。
マビノギオン: 神話として重要な「マビノギ四枝」
19世紀に成立したマビノギオン。
3章11編の物語が収録されていますが、第三章はアルスル王(アーサー王)の宮廷における3つの恋愛物語。
ウェールズ神話を最も記されているのは「マビノギ四枝」とされています。
- ダヴェドの大公プイス
- スィールの娘ブランウェン
- スィールの息子マナウィダン
- マソヌウイの息子マース
それぞれ見ていきましょう。
第一枝: ダヴェドの大公プイス
マビノギ四枝の最初の物語「プレデリという人物の出世」にまつわる話です。
プレデリはこの全部の物語に登場する人物であり、リアンノンの子供です。
美しい乙女「リアンノン」は略奪婚によりダヴェドの大公プイスの妻となった。
その後、子供「プレデリ」を産んだが、怪物に誘拐され、リアンノンは「子供殺し」と扱われた。
そして、「領地に訪れた客人を背負って運ぶ」という罰を7年間受けることになった。
子供プレデリが大公の元に帰ってきて、誤解が説けるまでが描かれています。
第二枝: スィールの娘ブランウェン
第二の物語はブリテン王の妹「ブランウェン」とアイルランドの王の結婚と、報復戦争の物語。
ブリテン王の弟がアイルランドの王を侮辱してしまった。
和解はしたが、このことに怒ったアイルランドの王は、花嫁として嫁いでいたブリテン王の妹「ブランウェン」を虐待し始めた。
このことを知ったブリテンはアイルランドに戦争を仕掛けました。
ただ、アイルランドは前述したブリテンから侮辱への謝罪の品として送られてきた「死者を復活させる大釜」で対抗。
アイルランドの兵士は死んでは生き返りを繰り返し、泥沼化。
最終的にブリテン王が命と引き換えに大釜を破壊した。
戦争は最終的に「ブリテン側の生存者7名」と「アイルランド側の妊婦5名」を残し、全員が死んでしまった「滅亡戦争」となった。
第三枝: スィールの息子マナウィダン
第三の物語は「第二の物語の戦争」から生還した「プレデリ」と「マナウィダン」という青年。
マナウィダンが第一の物語に登場したリアンノンと結婚したところから始まります。
プレデリはマナウィダンと共に狩りや商売をしながら、ブリテン島を渡り歩いていました。
そんなある日、白い蛇に導かれて怪しい城に入ったプレデリ。
彼はその城の魔力に捕らえられ、リアンノンも救おうとしたが巻き添えを食らってしまった。
なぜ、魔法の城に捕らえられたのか?誰が何の目的で・・・・
自分の妻と友を救うために、マナウィダンの冒険が始まる・・・・。
当時のウェールズ人の生活習慣や刑法も知ることができるという物語でもあります。
第四枝: マソヌウイの息子マース
第四の物語は、第一から第三の物語の舞台となった地方から変わった場所での物語です。
ウェールズ南部の「ダヴェド地方」からウェールズ北部の「グウィネッズ地方」が舞台となります。
「マソヌウイの息子マース」はこのグウィネッズ地方を統治する王。
戦争中以外は「自分の足を乙女(処女)に支えさせなければいけない」という意味が分からない弱点を持っていた。
こんな弱点を持つ王を中心として、アリアンロッドやブロダイウェズという女神。
アリアンロッドは自分の子供を呪い、ブロダイウェズは自分の夫を裏切って殺害しようとした。
そんなヒロインたちとその子供たちの対立を描いた作品。
マビノギオン: 「アルスル王伝説」
「アルスル王」は日本でも有名な「アーサー王」のこと。
ウェールズ地方もアーサー王の国が治めていた地方のことです。
当然、マビノギオンにもいくつかの話が収録されています。
- キルッフとオルウェン
- アルスル王の宮廷の3つの恋愛物語
それぞれ見ていきましょう。
キルッフとオルウェン
キルッフはアーサー王の従兄弟である騎士。
彼を主人公とした嫁をゲットするための物語です。
~人間を毛嫌いする巨人族の娘~
母の死後、父と再会した継母に嫌われていたキルッフ。
彼はこの継母から「オルウェンという女性を狂おしく求める」呪いをかけられた。
この呪いが一番厄介なもので、オルウェンは「人間を毛嫌いしていた巨人族の娘」でした。
巨人族は「結婚するなら数々の試練を乗り越えてみよ」と無理難題を出してきた。
- どこにいるかわからない人間を連れてこい
- 巨人族の剣を持ってこい
などであったが、アルスル王達の手助けをかりて、最終的にオルウェンを妻に迎えました。
アルスルの宮廷の三つの恋愛物語
マビノギオンの最後に収録されている3つの物語。
これはアルスル王の宮廷を舞台にし、騎士と貴婦人の3つの恋愛物語となります。
ここに登場する騎士たちは「アーサー王伝説」でも重要な位置に登場します。
ウリエンの息子オウァインの物語 | 異世界で泉の精霊と結婚したアーサー王の騎士オウァイン。 彼が「1年以内に必ず冒険から帰る」という約束を破ってしまい、離婚され、再びよりを戻す物語 |
エヴラウグの息子ペレドゥルの物語 | ペレドゥルは円卓の騎士パーシバルのこと。 「黄金の手のアンガラット」という乙女の愛を手に入れるために冒険をする物語 |
エルビンの息子ゲライントの物語 | アルスル王の騎士ゲライントの物語。 妻の不貞を疑いながら旅をしていたが、実際は貞淑であった妻に助けられるという物語となります。 |
まとめ: マビノギオンはこんな書物
今回はウェールズ神話の原典となるマビノギオンについて紹介させていただきました。
ちょっとぶっ飛んだ話から、人間関係まで描かれた物語。
読むだけでも大変な書物となっています。
という訳で今回のまとめ
- マビノギオンはウェールズ神話の原典
- 19世紀にイギリスのウェールズ語研究者シャーロットが出版
- 4つの書物を一つにまとめた物語
- 3章11編の物語で構成
- 神話として最も重要な「マビノギ四枝」
- アルスル王に関係する物語、騎士の宮廷恋愛物語が収録
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