今回紹介するのは
ガリア人の豊穣神
ナントスエルタ
です。
ケルト神話に興味がある人はぜひ一読してみてください。
ナントスエルタとは?
ナントスエルタはケルト神話(ガリア神話)の女神。
北イタリア~フランスで居住していたガリア人が信仰していた女神様とも。
~ナントスエルタのプロフィール~
- 欧文表記: Nantosuelta
- 別名: シルウァーナ(Silvana)
- 名前の意味: 曲がりくねった川、日のあたる谷
- 夫: スケルス(sucellus)
- 出典: ガリア神話、アルザス・ロレーヌ地方の遺跡
ナントスエルタ: ガリア人の豊穣神
ガリア人はケルト語を話すケルト人の中でも、北イタリアからフランスで住んでいた人たちのこと。
その地方のドイツとフランスの国境地帯のアルザス・ロレーヌ地方。
ここの遺跡から発掘された彫像に描かれていたのが、このナントスエルタ。
彼女は
- 片手には果実やミツバチの巣、壺
- 片手には葡萄酒?の大瓶大樽、リンゴなどが山盛りになった籠
など、何かしら食物などを持っている姿です。
このことが示しているのは、彼女が「豊穣の女神」「大地の女神」であるということです。
ナントスエルタを彫像した人たちは、女神に豊穣を願ったことも示してくれています。
シンボルのカラス
ナントスエルタの彫像の手は「先端に小さい家?(妖精の住居説)の模型が付いた棒」を保持している。
この家はケルト神話における妖精たちの家とケルト人との繋がりを示しているとされており、これも豊穣を象徴しているとされています。
そして、この家の周りには「カラス」が描かれていることがあります。
このカラスはガリア神話の「ナントスエルタ」とアルスター神話、ダーナ神話の女神「モリガン」にもみられます。
これはケルト人が同じ死生観・世界観を共有していることを示してくれています。
-ケルト神話のカラス-
カラス(ワタリガラス)は古くから戦場で死体を啄む為に見られます。
このことから、黒いカラスは戦争では重要な役割を持つとされる。
女神ナントスエルタもカラスに変身し、味方の軍を導いたとも。
モリガンもカラスに変身し、兵士を鼓舞し戦いに向かわせるような力を持っているとされる。
ナントスエルタの名前の由来
彼女の名前は言語学者がナントスウェルト(Nantoswelt)を作り直したものであり、明確に翻訳することはできないと言われています。
ですが、ケルト祖語(期限全800年頃のケルト語の共通祖先の言語)で一番近い言葉があり、プロフィールにも書いてある
- 太陽が降り注ぐ谷の女性
- 太陽で温められた谷の女性
- 曲がりくねった川の女性
です。
どれが彼女の名前の由来なのか。それは「ナント」「スエル」「タ」の言葉の意味が教えてくれます。
「ナント」は「川、小川」と「谷」の両方を意味する可能性がある。
これは「ウェールズ語」では「小川」という意味だが、より古い言語では「谷」という意味もあったことが理由らしい。
そして、その次の「スエル(swel)」はウェールズ語で「太陽」と訳される。
最後の「タ(ta)」はケルト祖語では「解凍する」、「暖める」といった意味があったとされる。
なので、「ナントスエルタ(Nantosuelta)」の名前の意味は
- Nanto: 谷
- swel: 太陽
- ta: 暖める
で「太陽で温められた谷」となり、それの女神であるので「太陽で温められた谷の女性」という意味になるのでしょう。
夫のスケルス
ナントスエルタの夫はスケルス(sucellus)という森の神で、名前の意味は「立派な鉄槌を持つ者」。
中年の髭を生やし、鉄槌と飲み物の瓶を持ち、犬を連れた男の姿で彫像されています。
妻ナントスエルタと一緒に描かれている時は繁栄と家庭性に関連しているとされています。
犬はケルト人における「死者の世界の象徴」とされているので、スケルスも異界の神なのではという説がある。
液体の入った樽などから「異界の宴会を取り仕切っていた神」と見なされることや、鉄槌から「鋳造の神」とも見なされることもある。
まとめ: ナントスエルタはこんな女神
今回はケルト神話の中のガリア神話における、「ナントスエルタ」という女神について紹介させていただきました。
昔から戦いと農業は人の生活と切っても切れないものであったので、そういったものを助けてくれる女神さまが必要だったのでしょう。
そういった意味でも、ナントスエルタの重要性は高いのでしょう。
という訳で今回のまとめ
- ナントスエルタはガリア神話の女神
- アルザス・ロレーヌ地方でその彫像が発掘される
- 豊穣神であり、火の女神でもある
- 死や戦場を象徴とする烏をシンボルにもつ
- 曲がりくねった川の女性という意味を持つ
- 太陽が降り注ぐ谷の女性という意味を持つ
- 「ナント(谷)」「スエル(太陽)」「タ(暖める)」となる
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