今回お話するのは
世界の創造神
ブラフマー
です。
インド神話に興味がある方はぜひご覧ください。
創造神ブラフマーとは?
創造神ブラフマーはインド神話における最高神の1柱です。
世界とすべての生命を生み出した神様で、ヒンドゥー教においてもっとも重要視されている神様です。
~ブラフマーのプロフィール~
- 別名: ブラジャーパティ(生類の主)
- 名前の意味: 宇宙の原理
- 配偶神: サラスヴァティ
- ヴァ―ハナ(乗り物): 白鳥
- 出典: マイトリー・ウパニシャッド
インド神話の1回の誕生から滅亡の誕生部分を司る神様。
43億200万年活動し、43億2000万年睡眠しています。
ブラフマー: その外見と持ち物
創造神ブラフマーはその外見が特徴的で、
- 4つの顔に4本の腕
- 水壺
- 数珠
- 笏
- バラモン教の聖典ヴェーダ
といったものです。なぜ4つも顔があるのかは後述。
彼の持っている持ち物は全て「知識や何かを生み出す」ことに関連する品物です。
これがブラフマーの創造神としての性格を表しています。
ブラフマー: 世界の「原理」と人格
ヒンドゥー教の原型となった「バラモン教」。
これが定義する世界の大原則「ブラフマン」に人格を与えて信仰対象にしたのがブラフマーといわれています。
ブラフマンは「神がいるという前提の現代の物理法則」に相当するものです。
人間が供物を捧げて祈りの言葉を唱えれば、神々が力を貸してくれるとされています。
ブラフマーはインド神話の中で「苦行を達成したものにはブラフマンに従って力を与える」ような行動をします。
ブラフマー: 自分の作った娘にメロメロ
ブラフマーはサラスヴァティの夫です。
元々サラスヴァティはブラフマーが自分の娘として作り上げた女神でした。
しかし、ブラフマーはそのサラスヴァティの美しさに一目惚れ。
「娘ではなく嫁にしたい」といい、嫁になるように何度も懇願したそうです。
さらに、その美しさから一瞬たりとも目を離したくないと、自分の頭を4つに増やしました。
サラスヴァティは何度も断りましたが、最終的に受け入れて妻となりました。
ブラフマー: 敵を最恐にしてしまう
インド神話を読んでいると、アスラというインド神話における敵種族との戦いをよく見ます。
ただ、その中でも何体かのアスラは「神々さえをも凌ぐ力」を持っています。
実はこれ、創造神ブラフマーがこのアスラたちに、神をも凌ぐ力を付与したからです。
もちろん、世界の法則「ブラフマン」に従って苦行を達成したものに力を与えているからです。(人間世界でいうところの決まりごとに従っただけ。)
このせいで何度も神々が不利となったりするので、普通にトラブルメーカーです。
1: アスラ族の王 ターラカ
そんなブラフマーがアスラに力を与えた話で有名なのが「アスラ族の王ターラカ」です。
~息子以外に殺されない肉体~
アスラ族の王ターラカは激しい苦行を行っていた。
しかし、この苦行によりターラカは熱を出してしまい、世界を焼いていた。
これに困ったブラフマーはやむを得ずターラカに、
「十分に満足するくらい強力な恩恵を上げるので、苦行をやめてほしい」
と交渉しました。
恩恵は「シヴァ神の息子以外には絶対に殺されない」というものでした。
このあと、このターラカの恩恵はより強力なものになり、圧政を敷き始めました。
神々は困り果てブラフマーに「何とかしてほしい」と解決を願いましたが、ブラフマーは
「苦行を達成した彼の願いをかなえた自分が、彼を滅ぼすのは通理が通らない」
という理由で、ターラカの倒し方を示す以外は何もしませんでした。
その予言は「シヴァ神の息子がターラカを倒す」というもので、神々はその予言を実現させるため、さらに四苦八苦するはめになります。
このために遣わされた愛の神カーマもシヴァ神の怒りを買い、焼き殺されています。
しかし、なんとかシヴァの息子である軍神スカンダが誕生し、ターラカは倒されています。
2: マヒシャ(アスラ族)
苦行を達成したアスラ族のマヒシャ。
創造神ブラフマーはそんなマヒシャに「女性以外に殺されない」という能力を与えてしまいました。
男性の神が多かったインド神話において、神々はこのマヒシャに困ってしまいました。
そこで、女神ドゥルガーを生み出して倒すことで事なきを得ました。
3: ヒラニヤカシプ(アスラ族)
ヴィシュヌの3番目の化身ヴァ―ラハに殺害されたアスラの弟「ヒラニヤカシプ」。
修行を行い、その全てを乗り切ったことで創造神ブラフマーから
- どんな武器でも
- 人間や獣、神の誰でも
- 家の外でも内でも
- 朝でも昼でも夜でも
- 地上でも空中でも
自分は絶対に殺されない。
という「僕が考えた最強のアスラ」という肉体を手に入れてしまったのです。
ですが、ヴィシュヌ神の4番目の化身であるナラシンハによって倒されています。
ブラフマー: 三神一体
インドの最古の聖典「ヴェーダ」が完成した後の紀元前5世紀ごろ。
ブラフマーは世界の全てを作った存在でありましたが、バラモン教の衰退とともに地位が低下していきました。
すると、宇宙の創造や世界の創造の役割すら「シヴァやヴィシュヌの功績」となってしまいました。
その後、インドでは「ブラフマー、シヴァ、ヴィシュヌは全て同じ神であり、1つの魂で3つの体を使い分けている」という思想が産まれました。
この思想がインド神話の「三信一体」という考えで、各宗派に広く受け入れられていきました。
まとめ: 創造神ブラフマーはこんな神
今回はインド神話における最高神の1柱創造神ブラフマーを紹介させていただきました。
サラスヴァティの美しさを一瞬たりとも見逃したくない。なら顔を4つに増やそうというのはさすが神様というべきか・・・・。
という訳で今回のまとめ
- 創造神ブラフマーはインド神話のおける最も重要な神
- 世界と生命を創造するという役割を持っている
- 「ブラフマン」という世界の原則が人格を持ったのが「ブラフマー」
- サラスヴァティを元々娘として生み出したが、その美しさから嫁になってほしいと懇願
- 嫁の美しさを一瞬たりとも見逃さないように顔を4つに増やした
- 神の敵であるアスラに「ブラフマン」に従って強力な力を与えることもしばしば
- 時が経って、「ブラフマー、シヴァ、ヴィシュヌ神」の3柱が同じ神である「三神一体」という思想が生まれた