今回お話するのは
アイルランドの神々が主人公
トゥアハ・デ・ダナーン神話
です。
神々が人間に負けることもあるという珍しい物語でもあります。
トゥアハ・デ・ダナーン神話とは?
トゥアハ・デ・ダナーン神話はアイルランド神話の初期のお話です。
アイルランド島に神の一族「トゥアハ・デ・ダナーン神族」が入植。
その他の種族たちと争い、島を統一し、その後人間に敗北して表舞台から消え去るまでのお話です。
また、以下では「トゥアハ・デ・ダナーン神話」を「ダーナ神話」としていますが、意味は全く同じです。
ダーナ神話の流れ
ダーナ神話の基本的な流れは
- 世界が大洪水に飲み込まれる
- 生存者が次々とアイルランド島に入植
- 民族間で確執が産まれる
- トゥアハ・デ・ダナーン神族が入植
- 先住民やその他侵略者に勝利し、アイルランド島を統一
- スペインのミレー族という人間の一族と戦争
- 物量に押されて敗北し、表舞台から消える
簡単にはなりますが、ダーナ神話はこういった流れとなります。
この流れは紀元前2000年から紀元前1280年ごろまでの約800年間となります。
ダーナ神族は女神ダヌの子供たち
ダーナ神族は「髪の色が金髪の青い目、身長がとても高い」種族です。
その名前の意味は「女神ダヌの子ら」という意味で、女神ダヌの子孫たちがダーナ親族となります。
そして、その後のアルスター神話やフィオナ物語でも、彼らの血筋が活躍していきます。
ダーナ神族はアイルランドの神話にとって、なくてはならない種族とも言えます。
ダーナ神族の男の神様
そんなダーナ神話に登場するダーナ神族。
数多くの神様が存在していますが、
銀腕王 ヌァザ | ダーナ神族の最初の王様。 敵との決戦で右腕を失い、銀の義手を使っていたので「銀腕の王」と呼ばれる。 |
光神 ルー | ヌァザの戦士後に王位を継いだ光の神。 ダーナ神族の宿敵のフォモール族の王の娘エフニャが母親。 三人兄弟だったが、唯一生き残ったのが彼。 戦いの技術と万能の才能を持っており、ダーナ神族を勝利に導いてきた |
豊穣神 ダグザ | 豊作と多産をもたらし、魔法の棍棒を武器として操る豊穣の神。 温厚な性格の持ち主で、寛大な心を持った優しき神。 女神からの人気も高い |
医療神 ディアン・ケヒト | 光神ルーの祖父となる医療の神。 切断された腕をくっつけたり、致命傷を癒す最強の医者。 息子に嫉妬し、殺害している |
鍛冶神 ゴヴニュ | 魔法の槌を3振りするだけで、完璧な武器を作り出せる神様。 相棒のルフタやクルーニャと、必中必殺の投げ槍を大量生産することが可能。 王ヌァザの銀の腕を作った神でもあり、戦場で武器を高速で直し勝利に貢献したりもする |
地底神 ミディール | 神々が住んでいる地下世界の一つを支配している神様。 エーディンというケルト神話で最も美しい女性と結婚したが、最終的に分かれている。 |
ダーナ神族の女神たち
前述したのはダーナ神族の男性の神様たちです。
それ以外にも女神たちも活躍しています。
ダヌ | ダーナ神族の全ての母親 ダーナ神族の宿敵フォモール族とも子供を設けている |
モリガン | 戦いの女神。残虐な側面もみられる クー・フーリンに求愛したが拒否られ、逆恨みで襲ったが悉く返り討ちにされている |
マッハ | 戦いの女神。3回生まれ変わった女神 3度目の死亡の時、呪いによりクー・フーリンを大いに苦しめる |
ネヴァン | 戦いの女神。詩を予言する女神 クー・フーリンの死を予言し、彼の最期を看取った女神 |
アルウェズ | ディアン・ケヒトの娘 ヌァザの義手作成をめぐり、愛する兄ミアハが父に殺害され、彼の墓で薬草を泉に移植しようとしたが、父に妨害された |
エスニャ | アイルランドのマンスター地方を守護する女神。 姿が見えなくなる魔法の衣を水浴びをしている時に隠されて、人間の妻となった。 |
タイルトゥ | 元フィル・ボルグ族の女神。 アイルランドを先に支配していたが、ダーナ神族との闘いの後ダーナ神族となる。 アイルランド全土の大森林を斧一本で伐採したが、過労で死亡 |
個性豊かな女神もダーナ神族にはたくさんいます。
ダーナ神話の最大の戦い
そんなダーナ神族たちによる一番重要とされている戦いを3つほど紹介させていただきます。
- 第一次モイ・トゥラの戦い
- 第二次モイ・トゥラの戦い
- タルティウの戦い
です。
第一次モイ・トゥラの戦い
アイルランド島に入植してきたダーナ神族。
その力を示し、先住民であった「フィル・ボルグ族」と
- 島を平等に分配する
- 外敵には共同で当たる
といった契約を結ぶことになりましたが、フィル・ボルグ族は土地の分配を有利にしたくて契約を破り、戦争を始めました。
ダ―ナ神族は王のヌァザを筆頭にして戦いに勝利し、「コナハト地方という島の1/4」だけをフィル・ボルグ族に与えて講和しました。
第一次モイ・トゥラの戦いの後
戦いに勝利しましたがヌァザ王は片腕を失いました。
このことで、アイルランド島の支配者に求められていた「完全無欠」も満たせなかったので王位も失いました。
その代わりにブレスという魔族「フォモール族」の血を引いた神が王となり、悪政の中の悪政を敷いてしまい、民を苦しめてしまいました。
そこでヌァザは医療の神ディアン・ケヒトに銀の腕を作らせ、ブレスを追放してまた王位を奪還。
ただ、ブレスは血縁を頼りにフォモール族の王の力を借りてダーナ神族に勝利し、ふたたび搾取を始めてしまいました。
第二次モイ・トゥラの戦い
フォモール族の王「魔眼のバロール」。
この男とフォモール族との戦いが第二次モイ・トゥラの戦いです。
この戦いでダーナ神族に勝利を導いたのが光神ルー。
ルーは「魔眼バロールの娘エフニャ」と「ダーナ神族の青年キアン」との間に生まれた子供。
バロールは「娘の子供が自分を滅ぼす」という事を予言で知っていたので、殺害をしようとしたが失敗。
ルーは成人し、技術と知恵、「長い腕」の異名を取る飛び道具の腕前などを全て認められて、ダーナ神族の指導者となりました。
そして、戦いが始まるとルーは「相手を見るだけで殺す魔眼」を持つバロールを、魔眼の射程外から「動物の血と砂を混ぜて固めた弾丸:タスラム」で攻撃。
バロールの目を貫いて殺害。
予言通り娘の子供がバロールを打倒し、再びアイルランドをダーナ神族の支配下に取り戻しました。
タルティウの戦い
第二次モイ・トゥラの戦いでフォモール族を打ち破ったダーナ神族。
その栄光は160年ほどで終わりを迎えてしまいました。
きっかけとなったのが、島を訪れたミレー族の男性「イス」です。
彼は遺産分配の助言を王たちに求めました。
しかし、イスがあまりにもアイルランド島のことを褒めちぎったので、王たちはイスが島を奪おうと誤解。
彼を殺害してしまいました。
そのことに怒ったスペインに暮らしていたイスのミレー族。
大軍を率いて島に進軍し、イスを殺害した代償として莫大な賠償を求めましたが交渉は決裂。
戦いは数にモノを言わせたミレー族が勝利し、最終的にダーナ神族は地上から異界(地下世界)に追放されました。
これ以降、ダーナ神族は神話の表世界からは消え、陰ながら活躍するようになりました。
まとめ: ダーナ神話はこんな物語
今回はアイルランド神話の一つの時代、ダーナ神話について紹介させていただきました。
神の力って凄まじいのに、それに対して物量で勝利することが出来た人間が凄まじいと思います・・・・。
インド神話なら絶対にありえないでしょう。
という訳で今回のまとめ
- ダーナ神話はアイルランド神話初期の神話
- 神の一族「トゥアハ・デ・ダナーン族」の戦いの物語
- ダーナ神族は女神ダヌの子供たち
- 先住民のフィル・ボルグ族と戦争で勝利
- 一時期、宿敵のフォモール族に支配されていた
- 光神ルーの活躍でまたアイルランドを支配する
- 人間のミレー族のイスを勘違いで殺害
- 大軍のミレー族の前に敗北
- アイルランドの支配を人間に譲り、神は異界(地下世界)に移り住んだ
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